二〇〇六年九月十六日
北斉子さんの引越し運を占う。
北斉子(仮名)ともうします。
私は引越ししたいのです。ここ三年ぐらいの間に引越しできるでしょうか。
子供のころは父親の仕事の関係で二〜三年おきに住む場所が変わっていました。
今四十代ですが、結婚二年目の二十六の時にこの家を買って以来、引越しというものが一回もできませんでした。今、人生のさまざまな事をつらく淋しく感じるのも、引越しができないからではないか?
引越しさえすれば現状が打破できるのだ! と信じている部分があります。
自分は定住する人間ではなく住む場所を変えながら生きていくのが合う体質だったのに、家を持ったのは大きな間違いだったような気がするのです。
周囲は環境も悪くなく、近所とのいさかいがあるわけでもありません。
これまで主人に相談しても、子供の学校のことなど理由に面倒はゴメンとばかりにはぐらかされるのみでした。しかし!! 子供たちも中高生になりました。天の導きがあるのなら、一家を引き連れてどこかへ引越してみようかと思います。
ぜひお願いいたします。
人が引っ越すには様々な事情があります。しかし、仕事の都合、家が手狭になったから、ご近所の環境が悪いからなど、まあ、何かしら理由があるものです。この場合もきっとなにか具体的な理由があると思い、ご本人にメールを送ったところ、こんな返事が来ました。
年のせいなのか、先が見えてきて、どんなに望んでも努力しても手が届かない夢もあれば、心が通じ合わない人もいる、と、軽い絶望に近い気分が日常的になってきています。
日々、砂を噛むような思いで己の責任と思われるものを果たしつつ、今にも崩れ落ちそうな絶壁の上で強風に吹かれているような、何を見ても、すべては滅びる、死ぬ運命にあることが実感としてわかるような、そんな暗い精神性が、少しずつ自分の中に広がっていく気がするのです。
それを、何とかやり過ごそうと思って、環境を変えることを考えているのかな、と自分では分析しています。
無常を感じて、引越しに走るのは、新興宗教に走るよりも建設的なのではないでしょうか。
引越ししたい理由が軽い絶望感というのもなかなかすごい事です。しかし、具体的理由を欠くからといって、おかしな事では決してありません。ある意味日常生活を生きるという事は非常におっくうな事です。このような心性は伝統的な無常観に連なっているのかもしれません。無常観を背景として古来より人は旅に出ました。北さんは重苦しい日常生活から一時的に逃れるための儀式として引越しを求めているのでしょう。
さてそれでは、引越しの願いが叶うのかどうなのか占ってみる事にしましょう。
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地天泰の三爻を得た。
泰は泰平の泰です。内卦が天を現す乾で外卦が地を示す坤です。地と天が逆になっています。しかし、このことにより天と地が交じり、陰陽が通じるので実は非常にめでたい卦なのです。占ってこの卦を得れば望みは通るとされています。
されば、北さんはここ数年以内に引越しの願いがかない、幸せになれるというのでしょうか。
少し考えてみましょう。泰は天地の卦ですから、答えは天地の間にあります。答えの一つは、天地(あめつち)を住まいとすることでしょう。つまりは漂白することになるということでしょうか。それもありです。
もう一つは、引越しには天地の条件が成り立っているとも読めます。いわば天は時流です。子供が大きくなったという時期が来ました。地は環境です。引越しは経済的には大変でしょうができないほどではありません。
しかし、天地の条件が成り立っても、もうひとつ条件がなけれことは成り立ちません。
それは、人です。天地の間にあるものそれは人なのです。
ゆえに引越しは、人の問題、つまり意志と努力の問題であると易断します。
引っ越そうと思えばいつでも引っ越せます。家族を捨てた西行法師のように一人で漂泊の旅に出ればいいのです(決してこのようなこと奨励しませんが)。
しかし、北さんは一方では、家族を大切に思っているのです。家族を捨てて天地をすみかにする訳にはいきますまい。引越しが必要な場合、地道に家族を説得するしかありません。夫がその気になればすぐに引越しできるでしょう。これは天の導きによってもたらされるものではありません。
いずれにしても、北さんの絶望感がわずかなりにでも軽減されん事を祈念いたします。
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